なぜ私はClimate Tech VCのフェローになったのか
都市開発からテクノロジー、そしてClimate Tech VCへ──キャリア転換の背景と、その意思決定について書きました。
1. キャリア転換のきっかけ
2023年後半は怒涛の半年でした。9月に出産準備のために、ニューヨークからワシントンDCに引っ越しました。11月には、私が担当していたDoorDashの海外事業が本社主導から買収先のWolt主導へ移行することになり、所属していたインターナショナルチームが解散するという通知を受けました。12月に出産を控えていたこともあり、慌てて次のポジションを探すのではなく、一度立ち止まって時間をかけてキャリア転換を考えることにしました。当時は大変でしたが、今になると、自分のキャリアを振り返り、中長期的にしたいことを探す良いきっかけになったと思います。
2. これまでのキャリア
これまでのキャリアを振り返ると、色々な業種・ロールを横断して、国際的に面白い仕事をさせてもらったと思います。私のファーストキャリアはサステナブルな都市開発の分野でした。サンフランシスコの設計事務所で海外案件を担当していました。規模感でいうと、SimCityというゲームをリアルにしたような大きなもので、街全体の設計をしていました。その後、バークレーのMBAを2017年に卒業し、スピード感と新しいものを作る楽しさに魅了され、テクノロジーの分野に転向しました。この10年ほどは、シリコンバレーのスタートアップ数社で、海外進出の戦略やオペレーションを担当してきました。Quidでは、エンタープライズビジネスやパートナーシップを軸にビジネスを伸ばすという仕事をし、DoorDashでは、IPO後の急成長の中、新規のB2BビジネスをX20するという貴重な経験をしました。また、ハッスル重視のカルチャーで、リーダーシップからオペレーターとしてビジネスを伸ばす基本を叩き込まれました。
3. なぜClimate Techなのか
今までの仕事は、楽しかったし、学びやスキルの習得もありました。しかし、振り返ってみると、インパクトという観点では、ビジネスへのインパクトは大きかったものの、社会やコミュニティへの直接的なインパクトは小さかったように思います。子供ができたことで、自分にとって社会や地域コミュニティへの関わりがより大切なものとなり、次のキャリアのフェーズでは、ビジネス・社会への両方へのインパクトを目指すことで、より意義のあるキャリア形成ができるのではないかと考えました。そうした中、ファーストキャリアであるフィジカル(物理的)なサステナビリティと、セカンドキャリアのテクノロジーを合わせると面白いことができるのではないかと思い、クライメートテックにフォーカスすることにしました。クライメートテックは、気候変動の問題を環境問題として捉えるだけではなく、エネルギー、素材、製造業、農業など、社会の基盤となる産業を変革する可能性があることに魅力を感じました。
4. なぜVCなのか
VCに関心を持った理由は大きく二つあります。
一つ目は、自分がスタートアップ・イノベーションエコシステムのどこに最もフィットするのかを知りたかったからです。キャリアの選択肢としては、これまでの延長線上でスタートアップ側に入ることも考えていました。一方で、VCという立場で多くのスタートアップや技術、市場を見ることで、有望なセクターや企業への理解を深めながら、自分自身がどのような役割で最も価値を発揮できるのかを見極めたいと思いました。また、VCという仕事そのものが自分に合っているのかを試してみたいという気持ちもありました。
二つ目は、VCの視点や意思決定を理解したかったからです。ここ数年、スタートアップのメンターやアドバイザーをする機会が増えてきました。その中で、ファンドレイジングや投資家との関係性について、より実践的なアドバイスができるようになりたいと考えるようになりました。また、自身もスタートアップでIPOや買収を経験する中で、社員の立場からは見えない意思決定が数多くあることを実感しました。
投資家は何を重視しているのか。どのような視点で会社や市場を評価しているのか。そうした考え方を理解することは、今後スタートアップやイノベーションに関わる上で大きな財産になると考えました。
5. フェローシップと今後
現在私は、Impact Science Ventures (ISV) でベンチャーフェローとして活動しています。ISVは産業イノベーション・サステナビリティに特化したハードテックVCで、エネルギー・素材・製造・農業という分野でアーリーステージのスタートアップに投資をしています。私のフェローシップは、内閣府主導のグローバルキャンパス構想の一部のConnectというプログラムを通じたもので、海外ディープテックVCの一員として活動に従事し、VCのメカニズムや投資決定の構造を内部から吸収し、後に日本のディープテックのエコシステムに還元することを目的としています。
なぜClimateTechか、なぜVCかということには触れたのですが、もう一つのフェローシップの目的として、シリコンバレーの外で起きているイノベーションについて探索するということがあります。サンフランシスコには12年住んでいたこともあり、シリコンバレーのダイナミズムや起業家精神には今でも大きな敬意を持っています。一方で、近年はテクノロジーそのものよりも、技術をどう社会実装するかに関心が移ってきました。そうした意味で、政府や大学、研究機関、大企業などが密接に関わるDCやNYのエコシステムは、日本にとっても学ぶ点が多いのではないかと感じています。
このブログでは、Climate Tech、VC、そして日米のイノベーションエコシステムについて、現場で学んだことや感じたことを記録していきたいと思います。