海外展開を始めるベストなタイミングとは?
製品をグローバルに展開しようと考えていますか?そのためには何が必要なのか、そしてなぜタイミングが重要なのかについてまとめました。
私は最近、ある有名な消費者向けハイテク企業と海外展開計画について話をしました。同社の主力製品はすでに世界的な成功を収めており、現在は米国で第二の製品を(再)ローンチし、その後すぐに国際展開をしようとしているらしいのです。
しかし、ここで問題なのは、その2つ目の製品が軌道に乗っていないことです。初期のローンチから5年以上経つものの、いまだに普及していないのです。
そのため、私の最初の反応はこういったものでした: なぜ国際展開を急ぐのでしょう?なぜ、米国でもう少し時間をかけて成功させた方が良いのでは?
より大きな市場機会を追い求め、迅速にグローバル化することの魅力は理解できるものの、私は殆どの場合、まず中核市場で製品と市場の適合性(プロダクトマーケットフィット)と確固たるビジネスモデルを確立することを推奨します。国際的な事業拡大には、多大な時間と資本、そして部門横断的な努力が必要だからです。スイッチをオン・オフといったように、簡単にできるものではありません。
テクノロジー製品のグローバル展開を成功させるためには?
私はこれまで、エンタープライズ向けSaaSと、オペレーションを重視するマーケットプレイス事業の両方で国際展開に携わってきました。課題は多岐にわたりますが、成功する事業展開のほとんどは下記のような3レベルにわたるパターンをたどります。
加えて、グローバル展開においては本気のコミットメントと優先順位付けが欠かせません(これについては後ほど触れます)。

レベル1:ローカライズ
どんなに 「軽量 」なソフトウェアでも、自国以外の市場で販売し、サポートするためには相当なローカライゼーション作業が必要です。
- 製品: インターフェイス翻訳、フォーマット、内容
- セールス&マーケティング: 市場に合わせたメッセージ、販路、地域ごとのキャンペーン
- カスタマーサクセス: 言語サポート、ローカルSLA
日本の例ですと、DoorDashのエンジニアリング・ブログに、日本での事業立ち上げとそれに伴う製品改善に関してよくまとまった記事が掲載されています。要は、簡単に自動化できるプロセスではありません。
レベル2:ローカル市場向けにモノづくりする
グローバルに拡大するためには、多くの場合、すでにあるものを翻訳するだけでなく、市場に合わせて作成する必要があります
私の経験からいくつかの実例を紹介します:
- 製品
- SaaS:私が担当していたテキスト分析ツールは、日本語に対応する必要がありました。日本語はローマ言語とは構造的に大きく異なるため、新しい言語処理アルゴリズムに切り替える必要がありました。
- マーケットプレイス: カナダでローンチする際にも、アメリカとは異なり、さまざまな州の税制に合わせた製品を作成する必要がありました。
- チーム
- 海外での採用は大変です。ご存知の通り、日本ではバイリンガルの人材が本当に不足しており、アメリカよりも一つの会社に長く勤続します(12.3年対4.1年)。文化的規範、時差、トレーニング、これらすべてが摩擦を生む可能性があります。
- どのような方法(自分たちでやる、パートナーシップ、買収)で拡大するかにかかわらず、適切な現地チームを構築するには、多くの企業が予想する以上に時間と労力がかかります。以前にアメリカ本社の採用担当者が日本での採用に対して、正しい理解がなかったため、重要な事業拡大の職務に日本語を話せない人を雇ってしまったことがありました。当然のことながら、その採用はうまくいきませんでした。
レベル3:中核戦略の調整
これは多くの企業がつまずく段階です。国内ではうまくいっていても、海外では大きな調整が必要になることが往々にしてあります。
例:
- ビジネス習慣と価格設定
- オーストラリアではチップの習慣はありません。そのため、ライドシェアやフードデリバリーのようにチップに依存した価格設定モデルであれば、新たな戦略が必要になります。
- 規制
- 日本では、サードパーティのフードデリバリードライバーのほとんどが、車ではなく自転車に乗っています。これは、配達時間、ルート計画、コストなどすべてに影響します。
例えば、10kmの配達に車で15分かかるのに対し、自転車では30分かかります。
このため、配達プラットフォームでは、配送距離が短いことが一般的な密集市街地以外への進出が難しくなっています。
- 日本では、サードパーティのフードデリバリードライバーのほとんどが、車ではなく自転車に乗っています。これは、配達時間、ルート計画、コストなどすべてに影響します。
- 顧客の行動
- あるSaaS製品をAPACで展開しようとしたとき、中小顧客では、デジタル事業に対する知見があまりなく、このセグメントの顧客を狙うのは無理だと気づきました。そこで、よりデジタル成熟度の高い大企業をターゲットにすることに決めたのです。
最大の課題: 海外市場とコア市場の優先順位付け
実は、国際展開で最も難しいのは、ローカライゼーションでも税制でもチーム作りでもなく、社内の優先順位をはっきりさせることです。
コア市場を維持しつつ、新規市場に有意義な投資をする必要があるのですが、多くの場合、コア市場(特にそれが米国である場合)がリソースの99%を占めてしまいます。これは、今お金儲けができている場所であると言う意味では、理に適っているのですが、事業拡大が中途半端になる主要因なのです。そして、限られたサポートで物事を進めようとする海外市場チームにとっては、大変フラストレーションが溜まるのです。
グローバルに展開するのであれば、中途半端な努力では成功しません。コミットし、国際展開を優先し、それに応じて資源を確保しなければなりません。
今が海外進出の好機でしょうか?
コア市場が堅調で、海外進出にリソースを割く準備が整っている場合に限るでしょう。